相手に見透かされたtipsは果たして有効なのか
先日、職場の近くに引っ越したいなぁと思い都心の不動産屋へ赴いた。
その不動産屋で気の良さそうな中年馬面男性が様々な物件を案内してくれ、私は真剣に物件を吟味し、馬面はピックアップした数件のチラシを印刷してくれた。
おそらく環境への配慮だろう、裏紙を用いてプリントアウトをしていたようだ。私が受け取った物件のチラシの裏には社内訓的なことが書いてあった。
その中の一節に、
「お客様が駅と物件との距離の遠さをおっしゃった場合には、初めての移動は長く感じるんです!と伝えよう!」
と書いてあった。
「なるほど。これがマニュアルってやつか。」
と思いながら内見へ。
内見では2か所を回ったのだが、そのうち一件は駅からなかなかの距離があり、私は駅からの距離がウィークポイントであることを同行者に伝えた。と同時に、
「あ、これはあのセリフ来るのかな?」
と脳裏をかすめる。
すると案の定、爽やかイケメンであった同行者は、
「ま、初めてのとこは遠く感じるんすよねぇ~」
と返す。
かまととぶるのが得意な私は初めて聞く素振りでその場をやり過ごした。
その後、内見を終えて不動産屋に戻った私に、馬面が内見の感想を求めてくる。
駅近の物件の方が良かった旨を私が返すと、
「私もそう思います。」
と即答。
思い返せばこの「私もそう思います。」「私もそうすると思います。」といった類の言葉を馬面は多用していた。
たぶんマニュアルにあるんだろうし、実際このセリフの1,2回目の使用時には私の決断の後押しをしてくれていたから効果はあったんだろう。
しかし、「私もそう思います。」にマニュアルの影がちらついてしまったので、気づいたのちはかえって胡散臭いセリフに感じるようになってしまった。
今回出会った二つのマニュアルは、これらの技術が勃興した当時は猛威を振るっていたのだろうが、時が陳腐化を進めてしまい、いまでも本当に効果があるのかは疑念がのこる。
でも、私自身もこういったtipsを使っていることってないだろうか?
振り返ってみると結構ある。
例えばコミュニケーションをしている相手との距離を詰めるための技術としてミラーリングというものが有名だ。
過去数回、飲み会でこれを意識して会話に参加していたことがある。
あの時の彼、彼女らは当時の私の挙動を見て、
「うゎ、今更これ実践すんのかよ。きめぇ。。」
と思ってたのだろうかと考え、今日もベットで恥じ入り、もだえるのである。